「カミナー起きろー。俺もう出るからな。食いっぱぐれても知らねぇぞ」
「・・・おー。気ィつけていってらっしゃい」
毎朝必ず言ってくれるその言葉に俺がどれだけ救われているかなんて寝坊助には教えてやんない。
黙って立ってれば精悍な整った容姿のため誰もが一目置く存在だったろうに。
性格が問題だよな。
自然と上がる口角をちいさな咳払いで散らして一呼吸。
「いってきます」
そして俺は我が家の決まりごとを律儀に遂行して仕事場に向かった。
「あー今日も寝過ごした」
それはここ何年も毎朝口にしている言葉。
ドアが閉じる音で起きるオレはもう何年もアイツを送り出してやっていない。
この家に10年ほど前に出来た変な習慣はきっと今でも実行されてる筈だ。
是非ともそれをしっかりと目覚めた状態で堪能してみたいんだが、如何せんアイツは相当朝が早い。
出かける前にオレを起こせとに詰め寄ったこともあったが
「だって気持ちよさそうに寝てるんだもん」
アイツの言い分らしい。
もう記憶の彼方に追いやられてしまった懐かしい感触に指を伸ばしかけたオレはもやもやとした言い表せない感情が沸きあがって来るのを
「あーもーわからん」
そう言い捨て振り払うようにしてベッドに潜り込んだ。
「おそようカミナ」
目の前には目が笑っていないの笑顔と余り物で作られたオレのためだけの朝食。
「早く片してお仕事に向かってねダーリン」
「今日も綺麗だねハニー」
手を合わせてオレは湯気の立つ温かな食事を口に運んだ。
おはようのそのまえに
――――――――――――――――
↑