オレにとって宝物っていうのは他人にみせびらかすためにあるようなものだった。

「スゴイ」「キレイ」「カッコイイ」

最後には皆揃って「欲しい」とオレを羨む。
それはすごく気持ちの良いもの。

だから今回も、いや今回は今まで以上の自信があったからそれはそれは楽しいものになるのだろうと思っていた。







「ねぇねぇその子なんてゆーの?」



「おめめきれい。かみのけふわふわ」



「まっしろまっしろ、お人形さんだよ」



村長にの面倒はオレがみる!
と大きな啖呵をまたまたきって自分の穴倉に戻ろうと外に出るといつもつるんでる子供たちが待ち受けていて矢継ぎ早に問いかけてきた。
それにびっくりしたは素早くオレの背に逃げ込んでくる。



「まぁ、待てよおまえら。コイツだってびっくりしてるじゃねェか」



オレの二の腕には一層白さを増した指先が食い込んでいて



「なまえ、は。かみながくれたよ」



腕からひょこりと顔を覗かせたが名を告げると待ってましたと目の前の奴等は身を乗り出してくる。



!」



遊ぼう!」



「あっちを案内してあげるよ



再びオレを盾代わりにしたはちいさなちいさな震えた声で「かみな、かみな」と二回呼ぶ。



「ほら!が怖がってるから今日はここまでだ!!また明日連れてきてやるからそれまで待ってろ!?」



大きな声で怒鳴りつけてやればきゃあきゃあと面白可笑しく騒ぎ立てて散っていく少年少女たち。
その後姿に違和感が残る。



「かみな、かみな」



背中から全身へ、ゆっくりとだけど確実に広がっていく温かさにオレはその違和感に気付かないフリをした。











大切な大切な宝物。

今までの宝なんて足元にも及ばない。







「かみな、かみなこれはなぁに?」



「かみな、かみないっしょにいてね」



「かみな、かみなだいすきだよ」



「かみな、かみな」







オレの名前が舌ったらずな声で呼ばれる、それだけで

どうしてこんなにも幸せに感じられるんだろう?







何も知らない。
何も覚えていない。

ただあるのはオレの存在だけ。

赤ん坊のようなまっさらな

オレがいないと生きていけない。
オレがいないとんでしまう。

このきれいないきものがきえてしまう

それだけは・・・
















「・・・ナ・・・カミナっ!!」



左耳に走る痛み。
じくじくと熱を孕んでいくけれどオレは患部に触れてみることが出来なかった。



「おにーさん。耳から血が出てますよ?だから腕放してね☆」



「マジかよ!殺傷能力の高い起こし方するんじゃねェよ



「さっさと起きない方が悪いとは思いませんか?」



「まったくもって思わねェ」



大きな溜息が漏れる。
人の腕の中でこうも我が物顔で居られるんだからコイツはやっぱり大物だ。
オレは更に大物だけどよ!



今日のメシは?」



「カミナさん、オレが朝食作ってからまたココに舞い戻ったとお思いで?」



「だってオレのこと大好きなんだろ?オマエ」



「放してくれたらもっと好き」



青筋立てた笑顔を張り付かせた弟は、お世辞にも人形には見えなかった。











夢と現の狭間で観た












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