まず最初に思ったのが帰りたいなって事。
次はなんだか体中が痛いなって事。
その次は・・・






貧血には鉄分を





閉じたいと我侭を言い張る目蓋をどうにか持ち上げてみるとコキタナイ男達が言い争っていた。



一人はマヨネーズ臭い
一人は異様に甘味臭い
一人はなんかすっぱ臭い
一人はとにかく胡散臭い
一人はどうやらオタク臭い
一人はどうも犯罪者臭い




ぼくの頭上では不審者極まりない連中が口論を繰り広げていた。



「うるさいんですけどアンタ達」



死んでいるとでも思われていたのだろうか?
大層な瞬発力が発揮されてぼくに視線が集まる。



「ジロジロ見てんじゃねェよ。金取るぞコラ」


固まる空気にちょっと満足したぼくは起き上がろうと両手をつく。
手の平に広がるごつごつとした違和感に眉を顰めながらもとりあえず上半身を起こす。
見てみれば手の平では大小さまざまな砂利粒がその存在を遺憾なく主張していた。
疑問に思った僕は今更ながらに周囲を見渡してこの場所が往来のど真ん中だということに気付く。
そして寝かされた僕を取り合うかのように左右に分かれて暴れている人間達。




「いい大人が花いちもんめ?呆れるを通り越していっそ憐れだ」




「ちょっ、じぇんとるめんな銀さんがそーんなお子様の遊びに加わる筈ないじゃないか少年!!」

甘味がなにやらあやしい外来語交じりに訴えてきて痛い

「テメェのどこが紳士だ!寝言は寝て言え」

マヨが甘味を威嚇するのがうざい

「俺だったら例え花いちもんめの最中だろうが土方さんの命、紳士的に狙っみせますぜィ」

胡散がマヨを血祭りにしたいみたいで期待

「いや、紳士とか全く関係ないし。そもそも花いちもんめなんてやってないし」

オタク眼鏡は紳士が嫌い

「新八なに言ってるアルか!花いちもんめは立派な紳士になるための漢の儀式の一つヨ!」

酢娘の儀式説に賛成

「なにそれ初耳なんですけど。一体花いちもんめのどこにそんなステップアップ要素があるの!?皆無だよ皆無」

眼鏡まだまだ甘い


「馬鹿言ってんじゃねぇ新八。花いちもんめってのはなあ人生で最初に出会う差別の象徴だぞ。これだから毛の生え揃ってない餓鬼は困るぜ」

甘味ちょっと挽回

「これだからション便臭い餓鬼は嫌アル。さっさとお家に帰ってミ○キーでもしゃぶってな!」

眼鏡は乳臭いに訂正

「そんな神聖な漢の儀式に女は無用でさァ。俺がさっさと星に還してやるよチャイナ」

胡散バズーカ構えてどんと来い!

「ケっ!それで仲間外れにしたつもりアルか?上等アル表出るヨ」

酢娘対抗心メラメラで戦闘態勢


「なぁ、トシ。儀式を続けないとお妙さんを娶る立派な紳士になれないようなんだが」

犯罪者きもい


「近藤さんその夢は当分叶いそうも無いからちょっと黙っててくれ」

マヨ正論がウザイ

「トシィィィ!諦めたらソコで試合終了なんだ!俺はお妙さんを諦めたり出来ん!!」

お妙さんが心配


「黙れゴリラ。バスケットを侮辱するんじゃねぇよ。ジャ○プに捧げた俺の涙を返しやがれコンチキショウ」

甘味はジャ○プ愛




収まるどころか激化の一途を辿る頭上の喧騒に憐みを通り越したら怒りが沸いてきた。



「ごたごた抜かしてんじゃねェぞゴラァ」



再び凍りついた空気が少しだけぼくの怒りを和らげてくれる。



「で?どっちチームなんですか?因みにぼくを仲間に引き入れた時点でそのチームの勝利は決まりましたね」



服に付いた汚れを払いながら立ち上がったぼくは不敵に言い放った。



「勿論俺達真選組だ!少年」

ゴリラ熱くてきもい


「いやいやそんな奴等と一緒に居るとゴリラになっちゃうアルよ」

酢娘に同意


「そうそう。ここはやっぱりチーム安西に来い少年」

あんざい?


「いい加減バスケから離れてください銀さん。花いちもんめなんかじゃなくて他にやることがあるでしょう?」

乳臭い花いちもんめキライ?

「なんだ?安西先生バスケがしたいですって言やぁいいのか?」

あんざい??


「ちげーよジャ○プ馬鹿。この子がどうしてこんな所に倒れてたのかとか」

乳臭邪推?


「名前とか趣味とか好みのタイプとか色々ありまさァ旦那」

胡散とお見合い?


「ああ成る程ね」

甘味ともお見合い?


「納得するかァァァ普通。総悟テメェも少し黙ってろ」

マヨうるさい!


「土方さんが亡き者になってくれりゃあ俺の戯言も気にならなくなりますぜィ」

胡散に喝采


「何の解決にもなってねぇ!」

マヨの葬祭


「俺の心の平穏は訪れやす」

マヨ完敗



コイツ等本当に何やってんだろう。 相手してるのあほらしくなってきた。 さっさと帰りたいんだよぼくは。


「・・・とりあえずぼくの名前は」


誰も聞いている人間がいないかも知れないと思いながら話し出すと意外なことにぼくに視線が集まる。
毎週月曜日に朝礼台の上で調子こいて長話する校長の気持ちがちょっと分かるかもしれない。




「ぼくの名前は」



軽い緊張の中意味も無く同じ言葉を繰り返してコイツ等の興味を煽ってやる。
誰も単調な校長の話なんて聞いちゃ居ないからな、なんて考えながら話の組み立てを練る。


そして、



「ぼくの名前は・・・なんでしたっけ?」


まったく狙ったつもりは無いのに野次馬の連中まで見事にずっこけていた。


「すごい。壮観だ」


とりあえず必殺技入手。






2


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反転すると・・・
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